2010年10月15日

第17話 まず自分の足で立ちたい #nhk #drama #teppan

うーん。誰の気持ちもそれぞれに切なく分かる。

<初音の事故のことを聞いて店を飛び出していってしまうあかり。
病院でも息せき切って
「田中初音さんは!? 田中初音です、救急車で運ばれたはずなんです!」
受付の人が、どのようなご関係ですかと尋ねると
「…うちの…おばあちゃんです」
その言葉を当の初音が聞いていた。
「あんた何してますのや」
声をかける初音。
「……生きとった!」
驚くあかり。トラックが突っ込んで電柱にぶつかった自転車のまきぞえで腰を打っただけだ、大丈夫だと言っているのに救急車に押し込められた、と初音。
「そ…そうじゃったんか…う〜〜、良かったぁ…うええん」
しゃがみこんで子供のように泣き出すあかり。当惑する初音。
「うちのせいで〜うちのせいで!」
「何があんたのせいや」
「うちがかきまわしてしもうたけえ!」
「…あんたのせいもなにも、どないにもなってへん!」
あかりを抱き起こす初音。
「うちのせいで…おばあちゃんが死んでしまう思うた…」
泣き続けるあかり。当惑しながらも
「おばあちゃん、言いな!」
それに構わず
「おばあちゃん…良かった…おばあちゃん…」
「おばあちゃんて言いなて!」
声を荒げる初音。
「………」
涙でほおをぐちゃぐちゃにしたまま初音を見るあかり。あかりにぶっきらぼうにハンカチを差し出す初音。
初音は診察の順番で呼ばれ、早く仕事に戻れとあかりに言って立ち去る。呆然と見送るあかり。

浜勝。店番を栄治に押しつけて出て行ってしまったことで小夜子に叱られているあかり。別にあんたがいなくても痛くも痒くもない、腰掛けだったらやめろときつく言われてしまう。取りなすように、神田さんに謝ってこいと言う浜野。
栄治は、あかりがあそこまで慌てたことにびっくりした、と言い
「おばちゃんも嬉しかったんちゃうか、そこまで心配してくれる…下宿人ができて」

浜野は、自分もいつも小夜子に叱られてるから気にするなと声をかけ、気晴らしに、「楽しいとこいこう!」とあかりを「卓球場」に連れて行く。中からはブラス隊の音が聞こえてくる。
「…もしかして!…うちトランペットはもう…!」
まあそう言わんと、と浜野はあかりを中に押し込む。中にはブラバンを指導する岩崎もいた。
「覚えてるやろ、ブラバン王子!」
岩崎はあかりに、トランペット続けているか、と聞き、あのときの演奏は良かった、と改めてあかりを褒める。
「これでまた一緒にやれますな」
と浜野。
「え、あ、あの、でも!」
「『今は音楽どころじゃない』」
あかりの代弁をしてみせる岩崎。
「え?」
「さっすが先生、顔見て分かりますか!」
と浜野。
「浜勝さんは音楽のことしか考えてない…ピンポン?」
「ピンポン…ピンポンピンポンピンポーン!!さあ吹くでえ!」
はしゃぐようにバンドの所に走っていってトロンボーンを構える浜野。岩崎はあかりに
「楽しそうでしょう?」
「はい」
「好きなことをしている顔は、人を幸せにする。君がトランペットを吹いているときもそうだった」
「………」
「みんなの顔見ていってよ。答えにはならなくても、きっと何か感じるから」

「また逢う日まで」の演奏を始めるブラス隊。じっと聞きながら、自分が演奏して、初音がひそかに見ていた日のことを思い出すあかり。

尾道。
あかりの荷物の送り先が初音の住所になっていることを知って、どういうことだ、と興奮している錠。しかたなく、あかりの会社が倒産し、鰹節会社に勤め始めたことを話す真知子。それを今まで自分になんで言わなかったかと激高する錠。そこに鉄平も戻ってきた。そして欽也も。
「なに騒いでんじゃ」
「騒がずにおれるか!あかりの、田中さんところに住んどるんじゃ!」
「え!え!それって、あのベッチャーのばばあのことけ!」
と叫んで慌て始めたのは鉄平である。
「やめなさい、そんな言い方」
鰹節会社に紹介してもらった下宿屋がたまたま初音のところだったのだと冷静に説明する真知子。
「同じ家に住んどることには変わりねえ!」
「ええい、ど、どういうことじゃ!」
錠は憤然と立ち上がり、鉄平は頭をかきむしる。
「わしはな、絶対許さんぞ!!」
とクマのようにうろうろ行ったり来たりする錠。
「もう心配しとったとおりじゃ!!」
と叫んだのは欽也である。
「ああ、わしはな、最初から大阪行くのは…」
「違うけえ!お父ちゃんのことよ!」
いらだつ欽也。
「鉄平より取り乱しとる!」
「娘のことで親が取り乱して何が悪い!真知子はな、母親のくせに、落ち着きすぎなんじゃ!」
「「うちは!あかりを信じとるけんね」
「ほんなら、あのばあさんのことも信じとるんか」
「田中さんにとって、あかりは、実の孫よ?知らん人のところに預けるよりよっぽど安心じゃ」
「おまえは、どっちの肩を持つんじゃあ!!」
ほとんど悲鳴のようにわめく錠。そして憤然とどこかへ行ってしまう。
「またあのベッチャーのばばあが、うちんなかかきまわしよる!」
わめく鉄平。
真知子と欽也はため息をつく。

錠は久太のところに行き、加奈にあかりを説得するよう頼んでいる。加奈は
「うちはあかりには大阪におってほしいんですけど…あっちの音大受けるんじゃし」
「それは分かっとるけど…」
「あかりちゃんの気持ちだけでも聞いてやってくれんかのう。家族には弱音を言えんかもしれんし…」
と久太が言うと加奈は顔をしかめ
「娘が一人ではなんもできん、て決めつけとらん? あかりは、次の会社見つけて頑張っとるんじゃろ、それのどこが悪いんよ!とにかく、頑張ってるあかりのじゃまをせんとってください!」
2人を部屋から押し出す加奈。
「…じゃま…?」
「今のは、俺へのあてつけじゃ…」
と久太。

そこへ、大変なことってなんね、と言いながら、呼び出されたらしい隆円もやってくる。
あかりの会社がつぶれただけじゃない、と錠。
「いよいよ真知子さんに愛想つかされたか?」
とからかう隆円。
「もっと大変なことじゃ!」
と錠。
「怖れとったことが、起きたんよ…」

台所で豆をむいている初音。あかりがやってくる。
「からだ…ほんまに大丈夫なんやね?」
「どないにもなってへん、て言うたやろ?」
「…反省してます。大家さんが静かに暮らしとったのに、かきまわしてしもて…。でもうちは、ここにおりたいんです。ここに住んで、鰹節会社で働くって、決めたんです。うちの人生は、うちのもんじゃけん」
「あんたもやるか?」
あかりの言葉に直接は答えず、豆むきの手伝いを促す初音。

尾道では錠が
「あのばあさんに…あかりをとられるかもしれん…。わし、大阪に行って連れ戻してくる」
「やめとけ、錠ちゃんが行ったら騒ぎが大きくなる」
と止める久太。
「だけど!あかりは筋金入りのがんぼたれよ。目の敵にしとったばあさんにしがみついてでも、大阪に残るつもりじゃ。ほじゃけえ!やっぱり、わし、首に縄付けてでも連れて帰らにゃならんのよ、な? …な?」
「………」
久太も隆円も答えない。だが錠はひとり自分を奮い立たせるように
「連れて帰らにゃあ!」

初音とともに豆をむいているあかり。上手く行かずぼろぼろこぼしてしまう。
「あんたの人生はあんたのもんや。けど、これだけは覚えとき。あんたひとりで生きてんのと違う。育ててくれた親に背中向けるようなことしたらあかん。あんた、ここにおること、尾道の家族にちゃんと言うたんやろな?」
「…はい」
「そうやったらうちはなんも言わん。大家が下宿人のじゃまするすじあいはない」
「あの…大家さんはほんまにうちのこと…」
「うちに孫は、おらへん」
むいた豆を持って立ち上がる初音>

「あら」なんてない、実によく計算された脚本ではないか。なにか「ん?」と思うことがあっても、ちゃんと回収される。「あら」を見つけたつもりになっているとあとで「スマンカッタ」になる。

よいドラマにはたいがいそう思うが、登場人物の誰の気持ちも、本当にその立場に身を置いて想像してみればよく分かる。逆に言えば、外からただぼーっと見ていたら「??」となってしまうのはある意味当然である。実際の世界でも、人がなにかをしたり言ったりすることが唐突だったり極端に見えたりあほらしく思えたりすることはあるが、その人にとってはやむにやまれぬ、そして実にその人らしい行動なのだ。その人がどうしてそういう行動・言動をとるのか、想像力を巡らせることは人として肝要なこと。表面だけ見て判断してしまう人は間違ってしまう可能性がある。愛していれば「直観」も働くけどね。

しかもよいドラマの場合、たいがい登場人物は必ずしも自己中心的にだけ考えて行動しているのではない。ちゃんと周囲のこともその人なりに慮っている。それでもなお、自分のやむにやまれぬ気持ちも押さえ込めない。
そのあたりのバランスが素晴らしい。それこそが「リアル」だ。愛すべき人々のリアル(完全に自己中心的な人も、自己犠牲的な人も、愛せないと思う)。

あかりの「無神経」さについて、しつこく繰り返すが、これは、「他人のことに首を突っ込んで、自分の正義を押しつけるお節介娘」ではないのである。ときどきそういう勘違いな人が(実生活にもドラマにも)いるかもしれない。鼻白むお節介なのかそうでないのかは、そこにそれこそ「自分の人生」があるかどうかの違いでもある。鼻白むお節介は「あたしが一肌脱いでやる!」的な自己陶酔があるが、自分の人生が関わる、あるいは自分と無縁とは思えない、その故にやむにやまれぬ気持ちから関わるとすればそれは必ずしも唾棄すべきお節介ではない。

あかりは、「可哀想な孤独なおばあちゃんの心の扉を開いてあげよう」なんてことを思っているわけではないのだ。何度も言うが、あかりはまだ「自分が何者なのか」という問いに答えを出し切れていないのである。だからこそ「うちの人生はうちのもん」という言葉も出てくる。
もちろん現時点では、本当のお母さんやおばあちゃんのことをもっと知りたい、という意識ではないだろう。そうではなく、あかりは、自分の足で立ちたいのだ。だがもちろん、自分の足で立てるまでに育ててくれた家族や周囲のことを忘れるわけではない。そのことに本当に感謝できるようになるためにも、自分の足で立たなければならない。

親の仕事は、そう、子供が自分の足で立って歩めるように育てることなのだ(もちろん比喩的な言い方である。たとえば身体障害があって介護が必要であっても、それでも「自立」することはできる)。その仕事を完了して初めて、子供は親に本当に感謝ができる。

ともあれ、あかりは自分の足で立ちたい。そして自分が何者なのかを確かめたい。だれにも寄りかからずにすっくり立ったとき、育ててもらった恩も、産んでもらった恩も、きちんと感じることができる。

そういえば(ちょっとカッコつけすぎでギャグか?とも思えてしまうんだけど)ブラバン王子岩崎先生の
「好きなことをしている顔は、人を幸せにする」
も、まあ目新しい言葉でもないけど、いいよね。
好きなことをしている、というのは「自分の足で立つ」のひとつの重要な要素。
それぞれの人が、自分の足で立ち、自分が本当に好きなことをして、そしてそれをさせてくれる…寄りかかりはしないけれど、地面を支えてくれる周囲にきちんと感謝するとき、だれもがみなそれぞれ幸せになれる。愛し合う誰もが皆。

お父ちゃんの取り乱しぶりもたしかに「愛」の表現ではあるが、もうひとつ愛の高みに彼も「成長」していくのだろう、これから。

それにしても欽兄が出てくると嬉しい。あかりのような素直で元気で(それにしても今日の泣きっぷりも可愛かったこと…)ときどき突っ走る人も見ていて楽しいけれど、バランス良くものごとを見てきちっと押さえてくれる存在があると安心する。欽兄役の中の人は「要(かなめ)」さんという名前なのね。まさに「要」となっているね、家族の、そしてドラマの。

加奈ちゃんもいいな。単なるちょい役じゃない。ちりとての鯖子こと順子みたいだ。

単なるアソビ的予想だが、あかりの実の父親はあるいは(出てくるとしたら、だが)栄治さん?
錠お父ちゃんはあるいは、まだ無意識かもしれないし、あるいは十分意識していて口に出さないだけかもしれないが、初音さんの、すなわちかつての千春さんのいたところの周囲にいるかもしれない実の父親の存在が怖いのかもしれない。





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2010年10月14日

第16話 KYな娘が学んでいく物語…じゃないよ!! #nhk #drama #teppan

これまでは早回しで飛ばしてたOPも、ダンスに惹かれてつい見てしまう(^.^)

<初音にひっぱたかれて呆然とするあかり。初音は「鍵直しときや」と言いながら部屋に引っ込んでしまう。

あかりからひったくるように奪い取った「ちはる」ののれんを部屋の引き出しにしまい、あかりを叩いた手をじっと見て、かつて千春を同じようにひっぱたいた日のことを思い出している初音。
「あんたなんか娘やない!出て行け!」
「言われんでも出て行くわ!」

暗い部屋にじっと座っている初音の背中に
「ごめんなさい…」
とあかり。
「叩いたんは、うちや…」
初音はふりかえって
「悪かったな…」
「なにがあったか、教えてもらえん?」
「過ぎた話や…」
「うちにとっては、今の話です」
「出て行けいうたら…ほんまに出て行ったんや…」
「千春さん…? 追いかけんかったんですか?」
「何があっても帰ってくるな言うたら…ほんま、帰ってこんかったわ…」
初音は立ち上がり
「あんまり、かきまわさんといてや」
と言うと、去ってしまう。
「………」
無言のあかり。

浜勝でしっかり働いているあかり。すでに仕事にも慣れつつあるようで、小夜子もあたりが柔らかくなっている。
だが栄治のところに品物を運んでいったあかりはつい物思う顔に。どうした、と気づく栄治。
あかりは栄治に、夕べの顛末を打ち明けているらしい。昔お好み焼きをやっていて、そのころから浜勝の鰹節を使ってくれていると栄治。
「お好み焼き屋やっとった人が、お好み焼き嫌いになるもんじゃろか…。お店も開かずの間にしてしもて…」
「好きだからこそ、憎なるときがある。どうでもいいこっちゃったら、なにされても腹たたんようになる」

市電らしきものに乗っている初音。あかりを叩いてしまった手のひらがまだ気になり、憂い顔でため息をつくが、まっすぐ前を向いている。

真知子はあかりが田中さんのところにいると言ったことで複雑な表情。錠には言えない。そこへ鉄平がやってきて、あかりの住むとこは決まったんじゃろ、荷物送るなら持ってってやろうか、と言う。
「そのことなんじゃけどね…」
真知子が言いかけると、そこへ加奈が半べそでやってきた。篠宮造船所に錠がやってきて、あかりが大阪でどうしているかしつこく聞くのだという。加奈はしゃべっていないが、いつまでも隠しておけない、と辛そうだ。鉄平も
「俺も根が正直じゃけえ、隠し事は苦手なんじゃ…」
「…どうしよう…」
さらなる「隠し事」を持っている真知子はほとほと困った顔でため息をつく。これでは鉄平たちにもうっかり下宿のことは言えなそうだ。

生まれて初めての独り暮らしなのにちっとも親を頼ってこん、とぶつぶつ言っている錠。隆円は、便りのないのはよい便り、と言うが
「分からんで…あいつは負けん気が強いけえの、困っていても弱音を吐けんのかもしれん」
ならこちらから電話してみたらと久太が言うも、そんなカッコ悪いことはできないと錠。すると隆円は、こんな見栄っ張りの男にナンで真知子さんが惚れたんだなどと言いだし、錠は憤然と「仕事に戻る!」と去ってしまう。

また道ばたに座っている伝。あかりが通りかかる。なんかあったらおっちゃんに言えと言う伝に、
「実は困ってます…鍵を壊してしもて…」
「鍵? 鍵やったらわしが直したで?昼間おばはんに頼まれてな」

伝は、お好み焼き屋のためにここを改築したのは自分だという。初音は母娘ふたりで食べていくためにお好み焼き屋を始めた、と。千春が生まれてから、夫には早く死なれてしまったらしい。
「娘だけが、いきがいやったんや…。けどな、あかりちゃんが来てくれて、ちょっとは明るい顔するようになってんで」
いたずらっぽく微笑む伝。

夜。別室ではあるがふすまを開け放したままそれぞれの部屋に敷いた布団の中で横になっているあかりと初音。
「千春さんのこと…うちほとんど知りません。トランペット吹いとったことと、尾道におったことと…。うちの名前、尾道の町のあかりが、幸せそうじゃ言うて…つけてくれたそうです。…うち、このまま、ここにおったら、…いけませんか?」
「…………」
じっと天井を見つめたまま答えない初音。


朝。玄関で出かけようとする滝沢。相変わらず不機嫌そうで愛想がないが、あかりは話しかけ、自己紹介する。
「今朝も走っとっちゃたですよね? 走るの趣味なんですか?うちのお兄ちゃんも、市民マラソンに出て入賞したことあるんです」
「趣味?おまえな、ええ加減にしとけよ」

「おのみっちゃん…いまのはあかんわ。駅伝くんに失礼やで」
と冬美。
「駅伝君?」
滝沢は実業団で駅伝選手なのだが、強豪チームをはずされ、格下のチームに拾われた、単なる趣味ではない、と冬美。
「人には触られたくない、痛いところがあるんや」
「………」
「気ぃつけや? まあ私も首突っ込むところあるから人のこと言えんけど」
ほほえんで、あかりのほっぺたをつつきながら言う冬美。
「……」
あかりは夕べ初音にひっぱたかれ、あまりかきまわすなと言われたことを思い出している。

店で元気に立ち働くあかり。そこへ伝が買い物にやってくる。働くあかりを励ましつつも
「そうや、あんたおばはんと喧嘩でもしたんか? 今朝会うたらな、なんかえらい思い詰めた顔してたさかい」
「ほ、ほんとですか?」
気になってしまうあかり。

そこへ栄治がやってきて、さっき初音が救急車で運ばれたらしいと言う。
「トラックに突っ込んでこられてな…。わしも後から行くけどな」
「病院…どこですか?」
栄治に病院を聞いて、一目散に走り出すあかり。

「おばあちゃんが…おばあちゃんが!!」
泣きべそになるあかり>

誰にでも触れられたくないところはある…のは確かでも、触れられる必要があるのかもしれない。勝手に鍵を閉めて、触れないで入らないで、と言っているのを、いつもいつも「そっとしておく」のが最上とも限らない。もちろん、そんなこと言ってないでもっとオープンに明るく行こうよぉ!とか言って無神経なのがいいわけでもないが。

あかりが「無神経」すぎるのではないかという声も(例によってツイッター上で)散見される。けれど忘れてはいけないのは、千春さんはあかりの実の母親であるということだ。
あかり自身も千春さんのことを他人行儀に「千春さん」と呼び続けるくらい、微妙な心を抱えている。それこそ「私って誰なのかも分からん…」と尾道で悩んでいたのだ。何があっても尾道の家族との絆が壊れたりはしない、それは(かなり)確認・確信できた。だがそれで万事めでたし、という訳にはいかない。

あかり自身が、もしかして性格がこんなふうに非常に前向きで素直でなかったなら、心を閉ざしてしまってもおかしくないくらいの「事情」を抱えているのである。

これが、全く屈託も悩みもなくて単に「天然」で明るい子が、全くの他人にいらん「お節介」を焼く、という図であるなら「無神経」とかの批判もありかもしれないが、決してそうではないはずだ。ここは彼女自身にとっても問題の「最前線」なのだから。

「駅伝くん」のことだって、そんなん端から分かるかいな。
そんなことまでいちいち深読みしなければいけないのならコミュニケーションなんて成り立たない。もちろん人の心を思いやるのは当然。でも思いやることを要求しすぎるのはともすれば「暴力」だとさえ言いたい。
駅伝君に対するあかりの態度は全然非難されるいわれはないと思う。駅伝君自身の方が感じ悪いわ。そりゃ「事情」があるにしても、そういう事情を他人が分かって当然、という態度は気に入らない。まあ初音さんもある意味同じ穴の狢ではあるかもしれないけれどね。
でも駅伝君の「事情」はさして同情もできない。走るのが好きならただ頑張って機嫌良く走っていればいいのである。被害者意識に凝り固まっている感じが嫌。

「天然」で明るくて、それ故に人の痛みがともすると分からない若い娘が、だんだんに人の痛みを理解してKYでなくなっていく物語…だとは私は全く思わない。逆でしょう。痛いからと引きこもって甘ったれている人が、そういうふうには甘ったれない人に教えられるってことでしょう。
被害者意識(あるいは加害者意識←これも被害者意識と単にウラハラだと私は思う)でウジウジしている人が、そんなもんなんの役にも立たない、ということを学んでいく物語でしょう。
私はそう思う。


posted by おーゆみこ at 13:28| Comment(2) | TrackBack(0) | てっぱん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月13日

第15話 愛の広さ #nhk #drama #teppan

ちゅらさん風味もありますな。

<ぐっすり寝て、朝、よう眠れました、と初音にあいさつするあかり。大きな口あけて寝てましたな、アホみたいに、と悪態をつくのを忘れない(?)初音。

「田中荘」の玄関先で、いい天気!と、とても会社がいきなりつぶれた人間とは思えない上機嫌で伸びをするあかり。それを無言で押しのけて外に出る新しい下宿人の滝沢。あかりは怒って追いかけるが、滝沢はジョギングに出かけるようで、走り去る。
「はやっ…」

次に、サラリーマン風の男と小さな男の子が出てくる。父親と息子のようだ。

台所。ジェシカこと冬美は、新しい下宿人がめっちゃタイプや〜と身悶えしている。
「あいつ、最悪ですよ!うち2回もぶつかられたし」
「え〜〜ボディタッチぃ〜〜?うらやましいい〜」

あかりは別の下宿人らしき男にもあいさつするが、その男は声をかけられた途端にぎょっとして固まってしまう。
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です、ぼ、ぼくはだいじょうぶです…」
顔を合わさずどもりながら言う男。
「気にせんとき、笹井のおっちゃん、女の子ごっつ苦手やねん」
と冬美。
さっきの息子、中岡民男がやってきて
「やめてくれる、その変な大阪弁。おっちゃん、いこ!」
「あ〜」
笹井は民男は大丈夫なようである。

「あれ、あたしに甘えてんねん。母親が恋しいねんな〜」
「おかあさんいないんですか?」
「なんかわけありみたいやで。それより、あの大家さんの部屋に転がり込むって、おのみっちゃんも相当変わりもんやな」

そこへ初音がやってきて
「なにやら楽しそうな話してまんな! 大家が気に入らんかったら、出て行ってもろてもええねんで」

「……何年ここにいてもあの調子や。下宿人の顔見ると出ていけいうねん」
「…そうなんですか」
「…開かずの間、みたいな人よ」
「開かずの間?」
「自分に鍵かけてしもてるんや…。この建物にもあるねんで、開かずの間」
冬美はあかりの手を引いて、鍵のかかったドアの前に連れていく。

あかりは出かけようとしてふと、外からその「開かずの間」らしきところを覗いてみようとするが、何も見えないようだ。

浜勝に「出勤」するあかり。なんやほんまに来たんや、と嫌味を言う小夜子。
栄治がやってくる。下宿はどうだったと聞かれ、部屋が空いていなくて、大家さんの部屋に間借りさせてもらうことにした、とあかりがいうと
「え!あの大家さんの部屋に一緒に寝たんか」
と驚く浜野。
「おそれいりこだし」
と表情も変えずに淡々と言う栄治。
「小夜子さん、この子すごいかも〜〜」
と浜野。
「社長の魂胆分かってますよ。この子会社に入れてブラバンやらせる気なんでしょ」
「そんな…あほな」
と言いながらお見通しされたという表情の浜野。だが
「トランペットはやりません。今は仕事に集中します」
と宣言するあかり。

浜野はあかりにかつおぶしについてあれこれ説明している。お得意さんによってかつおぶしの配合も違う、それがだしの味を決める、と言いながら
「おのみっちゃんとこの大家さんが店やっとったころは、そらぁうるさかったらしいで」
「え!お店やっとられたんですか!」

あかりはわざわざお好み焼きを買って田中荘に帰る。開かずの間を外から再び覗こうとしているところに初音が通りかかる。
「ここ、お店じゃったんですか!」
屈託なくたずねるあかり。
「知らん」
と初音。
「知らん言うて!」
「しつこいなあ、出ていきたいんか?」
あかりは買ってきたお好み焼きを一緒に食べようと誘うが
「お好み焼きは嫌いやて言うてたやろ」
「これは大阪のお好み焼きじゃけん」
「大阪でもどこでも、嫌いなものは嫌いなんや」

2つのお好み焼きを前に
「ひとりで食べよかな…」
あかりがつぶやくと
「あんたそれ食べきれるんか?」
「2枚は…無理かも」
「計画性のない買いもんして、食べ物粗末にしたらバチ当たるやろ」
「一緒に食べるつもりじゃったんやもん」
「お好み焼きは嫌いやけどな、食べ物残すの見てられんよって…」
と初音がテーブルの方に来かかった途端、冬美が初音にぶつかる勢いでやってきて
「うわ〜〜!ええ匂い!お好み焼きや、あたり!あれ、2つあるやん」
複雑な顔で引っ込む初音。冬美はすっかりお好み焼きを食べるつもりになっている。
「大家さんと食べるつもりだったんやけど…」
「あかんあかん。大家さんお好み焼き苦手やねん。あたしが食べたるわ」

大阪では、気取らないものを一緒に食べるくらい気のおけない仲、ということでお好み焼きは男と女の恋のバロメーターや、と講釈する冬美。
そこへ初音がお茶を入れてくれる。
「毒入ってても知りまへんで」
と言いながら。驚いたのは冬美である。
「おのみっちゃん…あんた大家さんに歓迎されてるんとちゃう?ここにきて3年やけど、お茶入れてもらったの初めてや」

通りに座って何やらやっている伝の膝の上に、回覧板(?)をぽんと置き、
「飽きもせんと、ようやりまんな!」
そして妙に軽いスキップのような足取りで去ろうとする初音。
「ちょっと待った!」
と伝。
「結局あの子入れたったんか」
「あかん言うても言うこときかんさかいな〜。強情でかなわんわ」
そこはかとなく、嬉しそうと言えなくもない表情の初音である。
「どこぞのおばはんによう似とるわ。せや、孫ができた気分か?」
「アホいいな!」
つんとして行ってしまう初音。
「図星、かいな」
ニヤリとする伝。

夜。決意を固めた顔で真知子に電話するあかり。あかりが言う前に真知子は
「聞いたよ…、会社、つぶれたんじゃって? 欽也の信用金庫に、連絡がいったんじゃと」
「……。ごめん!心配かけて」
「心配しとらん言うたら嘘になるけど…」
「あの、…あの、驚かんで聞いてね…うち、いま…田中さんところにおるんよ」
「………」
眉根が曇る真知子。
「会社の人に紹介されたのが、…あの…田中さんの下宿屋で…。ごめんね、お母ちゃん!」
「……なに、謝っとるん?…そう、そうじゃったん…」
「おとうちゃんは、…怒るじゃろうね…。でもうち、大阪で頑張ってみたいんよ。わがまま言うとるのは、わかっとるけど…」
「…お母ちゃんが、タイミング見て、話しとくけん!」
「…うん…」

電話を切って
「ちゃんと言うた。…これで、…ええね!」

真知子は少し物思いしてしまう。そこへ錠がやってきて、真知子のぼんやり顔をからかう。が、
「お父ちゃん…大阪の田中さん、覚えとる?」
と真知子が言うと不機嫌そうに
「覚えとるも何も…その話はすんなもう!」
「……」
「田中さんが、どうかしたのか」
「…ううん、なんでも。お風呂、沸いとるよ」

あかりは「開かずの間」が気になる。その前にじっと立っていると、民男が突然、化け物の扮装であかりを脅かす。悲鳴をあげて倒れるあかり。
その拍子に、開かずの間のドアの鍵が壊れ、あかりはその中に倒れこんでしまっていた。

開かずの間の中は、かつてのお好み焼き屋だった。店の名は「ちはる」。呆然と見回すあかり。

そこへ初音がやってきた。
「なにしとるんや!」
「あの…鍵が壊れて…」
「勝手に入ったらあかんやろ!」
「ごめんなさい…。…でも、ここ、お店じゃったんやね?」
「…知らん!」
「だって、これ…」
店ののれんを差し出すあかり。
「触りな!」
すごい剣幕でのれんを奪い取る初音。あかりはひるまず
「ちはるって…娘さんの名前…お店につけとったんじゃ…」

いきなりあかりの頬をひっぱたく初音。
「………」
頬を抑え、初音をじっと見るあかり>

このドラマでは、けっこう「ドラマチック」な出来事、展開が次々に起こり、「ついていけない」と感じている人もいるようだが、私は、このドラマは決して、出来事自体のインパクトで見せようというドラマではないと感じている。むしろ、何が起ころうともガタガタしない、基本的なフレームを見せようとしているのだ。それはたとえば、信頼感とか、思いやりとか、もっと大きな言葉でくくれば、若干陳腐に響くかもしれないが、やはり「愛」なのである。

何度も言うが、表面的に簡単に「あら可哀想に」なんて言っちゃったりするのは愛じゃない。私って優しい人と思い込んでいる人が実は一番残酷だったりすることもある。
愛には広さが必要なので、視野が狭い世界にしか生きていない人には愛は体験できないかもしれない。

愛とは、想像力なのかもしれない。人の心の奥底まで感じ取る(「理解」ともまた違うかも)想像力。それを「羽ばたかせる」ので広さがなくてはね。

このドラマの登場人物にはみなその愛がある。今はまだ分からない新しい登場人物だってきっとそうだ、と私はこれまでの展開から確信している。

あかりが無遠慮にお好み焼きのことを聞いてしまうのはどうなんだ、初音さんの心を思いやっていないではないか、という声もあるかもしれない。しかしそれは違う。あかりは、むしろ、開けて欲しがっている声を聞いた。ロマンチック過ぎる言い方だが、開かずの間も、初音の開かずの心も、閉まったままでは悲しすぎる。千春さんだって、その存在が閉じ込められたままなのだ。それは悲しすぎる。

初音さんは昨日も書いたように、実は真知子さんたちのことを思いやるがあまりに、あかりに関わらないようにしようとしている。娘を失った哀しみを知りすぎているから、その思いを彼らに味わわせてはならない。
そしてまた、自分の心の弱い部分も、うっかり外に出したらもう収拾がつかないだろう、と恐れているのだ。それだけ初音さんの哀しみは深い。
だがそれを救うことができるのはやはり現時点ではあかりだけなのだ。

愛というのはまた不思議なもので、たぶん、分け与えても分け与えても少なくならない。人は、愛が有限だと思っているから、他の人に愛を与えると自分の取り分が減るとか思うかもしれない。けれどたぶんそういうもんじゃない。四六時中相手のことを考えているのが愛だとしたらそれは有限なのかもしれないが、実はそうではないから。

あかりが初音を愛し、千春を思っても、尾道の家族への愛が減ることはない。ということに、いずれみんなが気づくのだと思う。
その「愛の広さ」こそがこのドラマの根底のテーマかもしれない。

あかりが初音の傷をえぐるかのように切り込んでいくのも、実はあかりがすでに初音を愛し始めているからである。
血のつながりがなんぼのもんじゃ、的に、第1週め辺りに書いたことと矛盾するかもしれないが、あかりはやはり実の母親である千春のことも思い始めている。それは「血のつながり」もさることながら、たとえ半年間であろうと、はっきりとは覚えていなかろうと、おそらくは自分を愛してくれたであろう母親の無意識の記憶ではないか。そしてその千春を愛したであろう初音に思いは当然繋がっていく。

初音さんは、ほんとうはあかりを愛したくてたまらない。自分では認められないだろうが。

伝さんも良い味だなあ。
伝さんもときにはそれこそKY的に振る舞うことになるのだが、それはむしろ、表面的なことにとらわれず本質をいきなり見るからこそなのだと思う。


posted by おーゆみこ at 11:57| Comment(2) | TrackBack(0) | てっぱん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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